唐十とデイリーマーム。両社の出会いは、一見ありきたりなものに思えた。唐十のスタッフが、メーカーの知り合い同士でたまたまデイリーマームの施設を訪問した際に、お土産で「ゴボチ」を受け取り、持ち帰ったという。唐十の食品部部長の檜さんは、このときのことを鮮明に覚えている。
「試食で食べた時に、ビビッとくるものがありまして、何種類かゴボチをいただいて帰ってきたんです。社内へ持ち帰って、机の上に並べていたところ、髙山会長がふらっと来て、『これはなんだ』と。会長がゴボチを食べたところ、『これは美味い!』となりまして。年明けの福袋に入れたいということになったんです。それが2年半前のことで。社内でも評判が良くて、うちのPB商品を作れないか。という話になり、『コラボ商品を作って、翌年の福袋に入れられたら』というお願いをデイリーマームさんに持っていきました」
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面倒くさいは面白い!
株式会社唐十は、唐揚げ専門店「からあげの店唐十」を運営する会社で、福岡県内を中心に、山口県、広島県、長崎県、宮崎県、熊本県などに広く展開している。メイン商品の唐揚げは、こだわりの九州醤油を使った秘伝のタレで下味を付け、粉付け、調理までを一貫して自社で製造。揚げ油は独自にブレンドしたものを使い、揚がったときのうま味を損なわないように工夫がなされている。“面倒くさいは面白い”が会社のモットーだという言葉通り、「安心・安全・衛生」に気を配り、製造工程は一つひとつが手作業で行われている。
商品は、実店舗の他、自社のオンラインショップでも販売している。出来立ての商品をマイナス40度で急速冷凍することで、レンジアップや自然解凍したときに美味しさや食感を保てるように開発。出来立ての味を全国各地へ届けている。そんな強いこだわりを持つ唐十が「ぜひともコラボ商品を作ってほしい」と願ったのが、国産ごぼうを使った無添加ごぼうチップス「ゴボチ」を製造・販売する株式会社デイリーマームだった。 両社の、ものづくりに対する熱い想いが噛み合い、およそか月の開発期間を経て「ゴボチ九州甘口しょうゆ味」が誕生。
デイリーマームは、原料の原料にまでこだわり、唐十の顔ともいえる唐揚げの甘めの醤油味に近づけた。期日が迫るなか、最後まで妥協せずに作り上げたことへの感謝を込めて、この度、唐十からデイリーマームにバックヤードアワードを贈る運びとなった。
両社の出会いは、一見ありきたりなものだったが、遡れば意外にも深いつながりがあった。互いにそのつながりに驚き、「ご縁を感じた」という。
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髙山幸作(株式会社唐十 常務取締役)
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こだわりって、泥くさいこと。
株式会社デイリーマームは、元々お弁当屋さんとして創業し、その後、ホテルの朝食バイキング事業などを行ってきた。地元、宮崎への想いも強く、県産品の加工・製造・販売に注力。西日本一の生産量を誇るごぼうをお弁当のお惣菜として作るなか、残りの端材を活用できないかと考え、スライスしたごぼうを油で揚げたお菓子「ゴボチ」を開発し、商品化した。発売後、地元、宮崎から火がついたゴボチ人気は、発売開始から2年で50万袋を販売。農林水産大臣賞を受賞する大ヒット商品となった。
素材を大事にし、見えないところにも手を抜かず、重要な工程は今でも手作業で行っている。宮崎の大地にしっかりと根を張るごぼうのように、強く、誠実に、真っ直ぐに。
ごぼうへのこだわり
「ゴボチ」の生産が軌道に乗り、間もなく原材料のごぼうが足りなくなった。デイリーマームの和田代表取締役社長(以後、和田社長)は、そのことを県の職員の方に相談したところ、有限会社グリーンエースの濵﨑さんと引き合わせてもらったという。濵﨑さんは、西日本ではごぼうのオーソリティーとして知られ、生産農家として最も大きい。何よりも、濵﨑さんのごぼうには当たり外れがないのだと和田社長は熱く語る。
和田社長 「ゴボチを作って13年。グリーンエースさんから12年、濵﨑社長のごぼうを使わせてもらっています。本来、ごぼうは3か月で終わるものなんですけど、社長のごぼうは劣化しにくく貯蔵がきく。積み方も、風が通り抜けるよう手をかけておられるんです。そもそも、土づくりから研究されてごぼうを生産しておられるので、天下一品で当たり外れがない。品質が良く、安心して加工できるので、使う側としてはものすごく助かっています」
不思議なご縁
デイリーマームがお弁当屋さんから始まったことは既述の通りだが、唐十も元々はお弁当屋さんをやっていた。驚くことに、唐十の髙山会長は、当時、フランチャイズのオーナー研修で和田社長と出会っており、さらには初対面の和田社長を自宅に招いたのだという。
年月を経て、偶然にも髙山会長がゴボチを食べたことで開かれたように思えた道は、実はずっと前からつながっていた。髙山会長は、デイリーマームの社長が、あの時の和田社長だったことを後で知り、そのご縁に驚いたという。不思議なご縁はこれだけでは終わらない。デイリーマームの和田専務取締役(以後、和田専務)の高校時代の同級生である松方さんが、唐十の社員だったのだ。二人はこの企画を通じて20年ぶりに再会し、いよいよコラボが一気に加速していった。ここまでくると、まさにこの両社は「出会うべくして出会った」というより他ない。しかし、コラボ商品開発の成功は「ご縁」だけではできなかった。良い商品が生まれた背景には「手作り」への熱い想いがあった。
和田専務 「元々、お弁当屋さんで創業したので、手作りということを大切にしてきました。多分、機械化すればもっと効率的にやれるんでしょうけど、重要な部分はやっぱり機械化しないで、手作業でその日のごぼうを見たりだとか、季節ごとに若干味を変えていくっていうところを大事にしていて。唐十さんも、唐揚げを手作業で本社で作られていて、そういった点で、手作りにこだわることが互いに共感を生んだように思います」
また、コラボ企画の発起人でもある、唐十の髙山常務取締役はこのように語る。
髙山常務 「うちも手間をかけて、極力手作りのものをこれまで提供してきたのですが、和田社長から直接ゴボチに対する想いを聞いて、大変感動しまして。オリジナルのゴボチが出来上がるまでに、ものすごい時間がかかったこと知り、良いものを作りたいというデイリーマームさんの情熱に、心動かされました」
原料の原料にまで
コラボ商品の開発は、決して容易なものではなかった。和田専務は、唐十の唐揚げの味に近づけようと、唐揚げで使っている醤油をゴボチに使用したりして何度も試作を重ねたが、なかなか思い描いた味に仕上げることができなかった。このままでは期日までに完成させることは難しいと、唐十の営業の方に連絡を入れたが、「年内に仕上げて、どうしても福袋に入れたい」との返答だった。和田さんはその熱意に応えようと、それまでの考え方を変え、地元でつながりのある早川しょうゆみそ株式会社の早川専務に相談をして、既存の醤油ではなくオリジナルの醤油ベースを作ってもらえないかと依頼した。
早川しょうゆみその製造部長である、富山取締役はデイリーマームの想いを受けて、オリジナルの醤油作りに奮闘した。
富山取締役 「うちが元々使っていた煮干しエキスがあったんですけど、それだといろんな副材が入っていて。なるべくシンプルで、なるべく何も使われていない原料を使おうと開発に着手しました。結構探して、四国のメーカーさんで100%のエキスを見つけ、そこからゴボチのタレだけのために取って、それを使ってダシを仕上げていきました。“出汁感”とかで味を調整して、採用してもらえたかなというところです。副材が入っていないものは、入っているものと比べて希釈した際の酸度が異なり、当然味も異なってくるので、そのあたりの調整をするのが難しかったですね。ただ、デイリーマームさんは原料の原料にまでこだわっておられるので、私たちもその想いに応えたいという気持ちで臨みました」
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早川しょうゆみそは、宮崎県都城市で明治18年から営んでいる老舗の発酵食品メーカー。「美味しさ」を追求しながら、日々新しい挑戦に取り組んでいる。
副材を入れ、原料の原料にまでこだわって何度もテストを繰り返し、オリジナルの醤油ベースが完成。「オール宮崎で」という想いで、デイリーマームの願いを形にした。
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その情熱が、両社を深く結びつけていた。
RECOMMENDER'S VOICE
常に安心安全な商品製造を行っており、ゴボチに懸ける想いがすごく伝わってきます。ゴボチを販売していく中で「美味しい、子供でも食べれる」というたくさんのお声を頂いております。今後も新たなコラボ企画をしたいと考えています!ゴボチに携わる全てのスタッフに感謝しています。