こだわりの平飼い鶏卵「天美卵」を強みに、直売所とレストランなどの複合施設およびネットショップ「大江の郷自然牧場」の他、宿泊施設「OOE VALLEY STAY」を経営する、有限会社ひよこカンパニー。
事業の根底には日本の農業と地元をよりよくしたいという想いがあり、25年前はゼロであった鳥取県大江周辺の観光客は、年間36万人以上に増えるほどになった。自社で生産、加工、販売まで行い、「天美卵」は採卵当日に、安心安全の品質で全国に発送する出荷体制を作っている。この出荷を支えているのがアワードを受賞した「GPまごころ梱包チーム」だ。
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この人の梱包で
GPまごころ梱包チームを率いる入社12年目の山根さん。入社してまず鶏の飼育へ入り、その後、対面での宅配を経験した後、グレードパッキングセンター(以下GP)所属となった。飼育では、餌の補充や集卵、鶏舎や鶏の知識までひよこカンパニーの根幹を経験。見るだけで卵の良し悪しがわかる目を養うことができ、宅配ではお客様から嬉しい声も厳しい声も直接聞くことができた。これまでの経験全てがGPでの出荷業務に活きているという。
チームの取り組みを聞くと、「一筆箋を入れてるんです」と山根さんは嬉しそうに語る。一筆箋とは、「私が梱包しました」と自筆で自分の名前を入れて書いた手紙のことであり、商品と一緒に梱包して送付している。一筆箋を大事に取ってくれているお客様もいたり、一筆箋の名前を見て「山根さんへ」とお礼の手紙をくれることもある。そして、驚くことに「この人の梱包でお願いします」と、梱包指名の声が届くこともあるという。「一筆箋で名前を出すということは、良くも悪くも責任があるんです」と山根さんは語る。一つひとつに責任まで同梱している梱包は、完全に作業としての梱包ではなくなっていて、一筆箋は、まごころ梱包を追求した一つの表現となっている。
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究極の矛盾にチャレンジ
山根さんが、GPに来た当初は一日最大800件だった出荷件数も、今では2000件にも及び、梱包のクオリティを下げず、時間内に全てを出荷するプレッシャーは大きい。特に、セット買いしてくれていることは嬉しい反面、同梱する梱包は経験が必要である。その為、注文件数だけでなく注文内容まで把握した上で、メンバーの配置など事前準備を徹底するという。当日は「時間あたりの進捗」をチーム内に共有。山根さんは、進捗状況を確認しつつ、メンバー配置の調整や判断を行い、時には自らも作業に加わって効率化を図っている。そんな中、梱包ラインで機械化を行った。ただし、「機械化=全自動化」ではなく、伝票と商品、送り状をセットするにあたり、ミスによる情報漏洩を防ぐことに対する効率化が目的であり、デリケートな商品のパッキングや包装、熨斗、一筆箋などの同梱や箱詰めは徹底的に手で行っている。機械による効率化で削減できた時間を、「まごころ梱包」に使い、メンバー配置の工夫と徹底した事前準備に加え、進捗の共有と臨機応変な判断によって「ミスなく早く、丁寧にまごころを梱包して出荷する」という、究極の矛盾にチャレンジし続けている。
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名前を出せる理由
梱包チームで5年目になる坂本さん。梱包作業は一通り経験し、今では周りから「梱包の達人」と評される。
「届いた荷物を開けたときに、ワッ!という気持ちになれるような梱包を大事にしています」
商品を綺麗に詰める、緩衝材を綺麗に入れる、と「綺麗」を大事にしているという坂本さん。箱の大きさや種類は様々あり、梱包方法にマニュアルはなく、みんなそれぞれが自分の「綺麗」という感覚と照らし合わせながら、自分なりの梱包スタイルを築き上げている。そのため、みんな梱包のやり方は少し違うという。それぞれの想いが込められた、それぞれ違いのある梱包だからこそ、同梱する一筆箋で、
「私が梱包しました」と自信を持って自分の名前を出すことができるのだろう。
坂本さん宛にお手紙をいただくこともあり、中には、病気のお年寄りのお客様から「坂本さんのおかげで頑張ろうと思う」という声をいただくこともある。坂本さんが梱包しているまごころがお客様のもとに届き、手紙と一緒にお客様からの「まごころ」が届く。このような、まごころのやりとりが、坂本さんのやりがいにつながっている。
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全員でゴールする
ひよこカンパニー歴15年の大ベテランで、ムードメーカーの高松さん。バックヤード全体を把握していて、「手伝えることは全部やる」と、バックヤードを跨いで動いている。
まごころ梱包チームは、日々時間との戦いであり「朝来た時から燃えている」と高松さん。始まってから出荷完了するまで、まさにフルマラソン。ゴールに向かって声を掛け合い、遅れているところがあっても助け合って進み、全員でゴールする。チームで全部やり切ったときの達成感が大好きだという。
チームについて訊いてみると、スタッフ同士の関係性の良さを挙げられた。チームを率いる山根さんについても「常に笑顔なので、みんな相談しやすい」と、柔らかい山根さんの雰囲気がチーム全体のカラーになっている。社長も、話しやすくフレンドリーで、スタッフの意見をよく聞いてくれたりと、一人ひとりの個性が尊重される環境がひよこカンパニーにはある。お客様に対してだけでなく、スタッフ間のコミュニケーションにおいても、互いを尊重した「まごころ」が大切にされている。このような、社内、社外に境目のない風土によって、自然と関係性の良さが生み出されているのだろう。
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まごころのバトン
受注チームにより、お客様との関係性がスタートする。最初の接点で全てが決まるので、プレッシャーは大きいが、それがやりがいでもあると池本さんは言う。お客様からの問い合わせでは、多種多様な要望があり、「例えば、商品の包装について難しい内容の相談があった場合でも、基本できないとお断りするのではなく、GPとなんとかできることがないかを一緒に考えて対応しています」と、受注タイミングからまごころを大切にして対応している。
このような、問い合わせと対応の情報は、全社で共有されていて、最初の接点で生まれた「まごころのバトン」をしっかりと次へ受け渡す体制が整っている。
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あえて選ぶ、非効率
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製造部門10年目で、テレビにも出演するパティシエの森さんは、全社に先駆けて「改善」をスタートさせている。
当初は製造した商品を全てGPに下ろすこともあったが、GPが困ることがあったり、データと実物が合わなくなることもあったという。そこで、1回の製造数ロットを減らし、製造回数を増やす改善を行った結果、効率は下がったが管理面ではかなり改善効果があったという。製造だけの目線だけではなく、受注から製造、出荷まで全社目線での改善を行っている。
非効率をあえて選んででも、お客様まで繋がる全体を良くするためのまごころが、製造における改善の取り組みの中に間違いなく存在している。
自然と生まれた言葉
全員の言葉から、「まごころ」とは全てのチームの共通テーマであること。そして、「まごころ」という言葉を先に決めて取り組んできたのではなく、みんなが大切にしたいことを責任を持って実践してきた、ひよこカンパニーの風土から自然と生まれた言葉であることがわかった。「自分がまごころ込めて取り組んでいることが、会社の成長につながっていることが嬉しい」バックヤードの誇りを感じる山根さんの言葉だ。
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RECOMMENDER'S VOICE
産み立ての天美卵と出来立てのスイーツを始めとする職人たちが丹精込めて作った無添加の品々を、1 年365日毎日休むことなく出荷時間ギリギリまで必死にチームワークよく連携され、全国のお客様にまごころ込め大事に商品を届けていただき感謝しています。これからもお客様が商品を開けた瞬間に笑顔になって頂けるような「まごころ梱包」をお願いいたします !