三瓶 亘

JEANS BUG(ジーンズバグ) / 株式会社ロビン

変わったけど、
変わってないよ

株式会社ロビンは、昭和14年、オーダーメイドスーツの仕立て屋として創業。街の人に愛され続けてきたショップは、「お客様一人ひとりと向き合い、その方にピッタリの商品・サービスをお届けして笑顔になっていただくこと」をモットーに、アメリカン・カジュアルな洋服の販売と学生服の採寸・販売を行っている。山形県天童市にある「JEANS BUG」は、1階が実店舗、2階がEC事業部とオリジナルTシャツのプリント工場となっており、受賞した三瓶さんは、プリント部門を任される工場長だ。

成長の鍵は「素直さ」

三瓶さんは、ロビンに入社して13年が経つ。鈴木社長と同級生だった三瓶さんは、社長から「暇だったら」と軽い感じで声をかけられた。ご本人曰く、ちょうどその頃、時間と力を持て余していたこともあり、友人の家業を手伝うつもりで入社。しばらくはアルバイトとして働いていたが、社員になる頃に「Tシャツのプリントをやってみないか」と鈴木会長から話があった。

シルクスクリーンのプリントは、熟練の技が求められ、職人としての会長の大きな背中を見ていた三瓶さんは、「自分にできるのだろうか」と当初は不安だったという。

「最初は、会長に教えてもらいながら、とにかく練習をして、『やっと大丈夫かな』となってから本番のプリントをする感じでした。ま、一発勝負というか、1枚ぐらいは刷れると思うんですけど、“返し”とか、版が乾いてきたりする兼ね合いで版を拭いたり、そういった工程の見極めをするのに時間がかかりましたね。最低でも3年はかかったと思います」

その過程を傍で見てきた鈴木会長は、三瓶さんの資質を高く評価していた。
「三瓶は、おっちょこちょいな面もあって失敗もするんだけど、私の言ったことをメモして、『次はちゃんと言われたことをやろう』と、吸収する性格なんですよね。アドバイスをすれば素直に聞き入れる。だから、上達がほんと早かったですよ」

オーダーを形にする、ロビンの原点。

ロビンには、創業から受け継がれてきた情熱のルーツがある。

鈴木会長 「私は三代目で、私の祖父が創業したんですけど、元々は注文洋服屋(テイラー)だったんです。祖父は技術に誇りを持っていて、店のガラス越しで裁断をやっていたんですよ。わざと逆手で切ったりとかして。地元の人を集めて、惜しみなく技術を教えたりする人でした。そういうのを小さい頃から見ていて、一人ひとりのオーダーを形にしていくのが素晴らしいなと。その気持ちを忘れないで商売をやっていきたいという気持ちがあって。私が商売を始めた頃、ジーパンはレディースが無くて、みんなメンズのパンツを履いていたんです。ウエストが緩かったり、サイズが合わないものを、その人に合うサイズに直してあげていました。お客様に喜んでもらいたくて、持っている技術を惜しみなく使おうと。プリントも、例えばテニスクラブがオリジナルのシャツを作ることで、チームに一体感が生まれたり。そういうお手伝いができたらなという想いでやってきました」

幼い頃に見た祖父の姿、そのスタンスに感銘を受けた鈴木会長は、想いを受け継ぎ、職人としての技術を三瓶さんに惜しみなく与えた。

誰かのスマイルが僕のスマイル

毎年行う学生服の採寸・販売では三瓶さんも店頭に立つ。普段は、ほとんど接客をしない三瓶さんだが、真摯に向き合い、寄り添う対応でお客様からの評判がとても良いそうだ。

鈴木会長 「制服の採寸はほんとに難しいんですよ。ほんとにピッタリのサイズを提案するのは。その子がどういう風に成長するか分からないから『お父さん、身長おっきいですか?』とか、何気なく聞いたりして。三瓶は、わからないとき、わかったふりをしないんですよ。必ず聞きにきてアドバイスを求めてくる。きっと、お客さんにもその一生懸命さが伝わるんだと思います」

学生時代から三瓶さんのことを知る鈴木社長は、三瓶さんの魅力についてこう話す。
「昔から、三瓶はムードメーカーで。野球部でも、補欠でサードコーチャー。だけど欠かせない、みたいな(笑)今でも、ちょっとピリピリした空気になりそうな時は、面白いことをやって会社の空気を柔らかくしてくれる。そういうところもありがたいなって思いますね」
そんな三瓶さんに、何がモチベーションになっているのかを訊いたところ、「まわりの人を笑顔にすること、それが自分の喜び」と教えてくれた。中学時代はホテルマンに憧れていたという三瓶さんには、「喜んでもらいたい」というおもてなしの想いが本質にあった。

気持ちをプリントにのせる

プリント職人としての三瓶さんは、とにかく質に拘る。安定的に同じ色を出すのはかなり難しいが、色の調合も緻密に行い、師匠の鈴木会長から見ても、その精度はとても高いそうだ。印刷技術においても、微妙な力の入れ具合や道具を変えてみるなど、上達への道に終わりはないと言う。
「プリントは、不思議と飽きないです。まだまだ良くなると思ってるんで。伝わらないかもしれないですけど、でもやっぱり綺麗なプリント、いいプリントをしたい。気持ちをプリントに乗っけてるのかな。一生懸命、『次はもっと』と思ってやっています。自分の中では、99点。日々、その1点を追い求めています」

その背景には、ものづくりへの情熱だけでなく、その先の「誰かのために」という想いがあった。
「うちの社長が“All for your smile”(すべては笑顔のために)というフレーズをよく言っていて、自分はそれをプリントで表現したい、と。一日300枚プリントしても、お客様にとっては300分の1ではなく1分の1。だから質に拘る。自分がプリントしたシャツを着てくださっている方を街中で見かけることがあって、そのお客さんにとってかけがえのないシーンで着てくださっていることにグッとくるというか。『誰かのために』というのがあるから、そこに緊張感とかやりがいが生まれるんじゃないかと思います」

変わったけど、変わってないよ

2006年、NPB(プロ野球)は「すべては歓声のために」というスローガンを掲げていた。野球好きの鈴木社長は、会社のスローガンを考えていたときに、その言葉をふと思い出し、“All for your smile”(すべては笑顔のために)という言葉に辿り着いた。お客様一人ひとりと向き合い、技術を惜しみなく注いで、良い商品を提供する。それが、お客様の笑顔、社員の笑顔、メーカーの笑顔につながる。「三方よし」を謳う鈴木社長の想いが詰まったこのスローガンを、三瓶さんは誰よりも理解していた。

鈴木社長 「天童って将棋が有名なんですけど、私が王将だとすれば、三瓶は金将、守りの要ですね。なんでも話せるし、いつも助けられています」

変わったけど、変わっていない。積み重ねてきた友情が、ロビンのバックヤードを力強く支えていた。

RECOMMENDER'S VOICE

熟練したプリント技術はもちろん、常にお客様へ寄り添う気持ちを忘れずに業務にあたってくれて、素晴らしい!製作した商品は確実にお客さんの笑顔につながっており、お褒めのレビューを数々いただいています。お客さんに代わって、私から「ありがとう!」今後もプリントのみならず様々なものづくりに挑んでいき、更なる飛躍につなげていけるよう頑張っていきましょう!

by 鈴木雄太 (代表取締役) / ロビン一同

STORY

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DIYをサポートする 住+ (じゅうたす) / じゅうたす株式会社

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